ここに在らず。


それはやけに真っ直ぐな瞳。こんな瞳で人に見つめられたのは初めてだった。


「……はい…」


それはまるで夢心地で、私は答えた。

夢心地…というか正に夢は夢なのだけれど、言葉の意味を考えるなんて事も出来ず、口は勝手に動いていたと思う。


尋ねられて、はい、と答えた。

それなのにそれが示す意味がよく分からない。私が今した返事には、一体どんな意味がある?それが結果、どこに繋がる?

少し落ち着いて来た後に抱いた疑問。でもそれもすぐ消えて無くなる事になる。


だってその後に、トウマさんが嬉しそうに微笑んでいたから。

だからその答えは間違っていないのだと、私はそう思った。

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