ここに在らず。
…もし、あの人が本の事を聞きたくて私に声をかけたとしたら、あんな態度で接した私は物凄く悪い事をしたのではないかと今更思う。
もし本が大好きな人だとしたら、ここの蔵書数を知ってわざわざ他の地域からやって来ても可笑しくはない。うん。何も可笑しくない。
だとしたらやっぱり悪い事をしたのは私で…なんで気づいてあげられなかったんだろう。人の事が分からない私がつくづく嫌になる。このままずっとこんな風じゃあ私、きっと人間としてダメになってしまう。
…よし。もしまたあの人が来たら聞いてみよう。声をかけて…みる訳にはいかないから、次の時は絶対。ね、そうしよう。
なんて心に決めたのがトウマさんと話をした次の日で、あの人にまた会ったのはそれから数日後の事。