ここに在らず。
「あ!えっと…そうなんですね…」
「…何?意外だと言いたい訳ですか?」
「え?いや、えっと…」
「俺だって王道な小説くらい読むんだよ。悪かったな」
「え?」
「ん?それとも何だ?英語なんて読めてんのかって?そっちか?バカにしてたのか?」
「!……い、いやぁ、そのような事は、」
「あ、当たりだな?当たりなんだな?うわーあんたも案外酷い奴だな。酷い、傷ついた」
「そ、そんな事は!違うんです違うんです!ただどんな本を読まれるのか気になってですね?それでっ、」
「シー。ここは図書館ですよお嬢さん」
「!」
ハッと我に返った私は慌てて口を閉ざす。そして言葉を呑み込んだままキョロキョロと辺りの様子を窺い、特定の誰かにという訳でも無くペコペコと頭を下げた。