ここに在らず。


なんて首を傾げて答えるその人に、私も同様につい首を傾げる事に。


「あれ?間違ってました…?」

「…い、いや、間違うも何も…あぁ、善意でってやつ?」

「善意?」

「…違うと」

「?、いえ、あの善意というか…私に本の事が聞きたかったのかと思ったので」

「え、誰が?って…俺か」

「…なんだか、違うみたいですね」

「…何の事だかもさっぱり」


本当にさっぱり分かっていないらしいその人は、キョトンとしたまま苦笑いのような笑みを浮かべている。そうなると…次に分からなくなるのは私の方だ。

< 113 / 576 >

この作品をシェア

pagetop