ここに在らず。
「…うん、でもアレだ。気になられてるのは分かってんだな」
「……気になるから声を掛けるのだと教えて頂きまして」
「…教えてもらった?誰に?」
その瞬間、私はギクリとする。
ヤバイ、話し過ぎたと。それが誰かなんて答えられる訳がない。それは私の中にしか居ない人物…むしろ私みたいな物だ。
そして私は頭の中を答えを探して駆け回る。どうしよう、どうしよう。普通はこういう時にどんな返事を……そ、そうか!
「と、友達に…です」
それこそ在りもしない存在だったけれど、これが正解だと思った。そしてそれは正しかったらしい。
「ふーん、なるほどねぇ」なんて、その人は疑いもせずにその答えを受け入れてくれて、私はこっそり安堵の溜息をついた。