ここに在らず。


トウマさんは黙って何か考え事をしているようだった。それでも、「いや、なんでもない」なんて次の瞬間には私に告げる。


「ナツキだな。教えてくれてありがとう」

「え?あ、いえ。でもこの事は一応秘密な約束で…」

「あぁ、そうか。じゃあ秘密にしておこう。あと、ナツキは俺と君が会ってる事を知ってるか?」

「あ、えっと、会ってる事は…夢の話は、していません」

「そうか、分かった」


そう答えたトウマさんはもういつものトウマさんだった。それがまた私には分からない。なんだか最近は分からない事だらけだ。きっと人と関わるってこういう事なのだと、私はだんだん分かってきたと思う。

でも、だからこそ、ここでもう一歩が必要なんだ。それが相手の思いに近づく大事な一歩。なんでこんな事をトウマさんが聞いてきたのか、それってもしかして…


「……あの、トウマさん。ナツキさんにこの事を…言わない方が良いのでしょうか?」

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