ここに在らず。
そして私は溜息を一つつく。もうこれは癖なんだと、そんな事に気づいてしまった分、諦めが肝心だと思った。
「えっと…そうですね…確かに、人が浮かんだ事はですね、事実です…事実ですが、でもそれは違うんです…」
「ん?どういう?」
「…いえ、あの、どうもこうも無くて…というか、確かに私は彼を好きですが、でも、彼とは一度しかお会いした事がありませんので…」
「え、そうなの?」
「そうなんです…だからまぁ、好きというかなんというか…憧れというか、理想というか、思い出というか…希望というか」
自分の頭の中で好きの意味を調べながら、それをトウマさんに当てはめようとする。するとトウマさんを表す言葉に最適な言葉はなく、強いて言うなら全部の意味を込めて好き、そうなるのかなと思った。
…でも、やっぱりその言葉一つでは伝えるには足りなくて、やっぱり口にするとそれは違うのかなとも思ったりして。