ここに在らず。


「…たす…けに、きた…?」


聞き覚えのある言葉。前にもこんな事を言われた事がある。あれは確か、確か私の、私の大好きだったあの人の…


そこに私は、彼の面影を見た。するともう、やめて下さい、離して下さい。そんな事を言える自分はどこにも存在しなくて…。


「あぁ…遅くなって、ごめん」


聞こえてくる声が、抱きしめられる腕の力が心地いい。
温かい。これは人の、トウマさんの温度…


「ふっ…うぅ…っ」


溢れ出る涙が止まらない。この感情は何?何故あなたが?これは…何?


「…あ、なたは……誰?」

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