ここに在らず。
満足した私は家へと戻る決心をした。今日で私は何かが変われる、きっとそうだ。それも全部…トウマさんのおかげ。
そして私はお礼を言ってその場を離れようとする。すると、また彼の声が聞こえてきた。
「…君は?」
「え?」
「君の、名前は?」
…今日はなんて日だろう。
こんなに沢山の事が、私に起こるなんて。
「サエ…です」
なんて素敵な日なんだろう…。
ーーその後、連れ戻されて真っ先に通された祖母の部屋。ヒステリックに叫びながら彼女が手に持つ杖を振り上げたその瞬間、私は私のスイッチをオフにする。
大丈夫、すぐ終わる。すぐ終わるから今は耐えればいい。耐えられる。大丈夫。
閉じ込められた倉庫。身体の節々の痛みを感じながら私は暗闇の中で一人、小さくなってこの時間の終わりを待つ。いつもと変わらないそれだったけれど、いつもより気持ち的には随分と楽だった。