ここに在らず。
彼の発するその言葉に、“何がですか?”そう尋ねようとした。…尋ねようと、そうしたはずなのに…私には、出来なかった。
「ここにはもう、君を苦しめるものは無い。だから…もういい、ゆっくりでいいから」
そう言ったトウマさんの手が伸びてきたと思ったら、それはそっと私の頭の上に乗せられる。それは優しい重み。優しい温もり。
「君の順番で、君のやり方でゆっくりやっていこう。君には俺がいる。だからもう、他の誰にも何にも怯える必要はないんだ」