ここに在らず。


…あぁ、これは…これはいつも、彼が与えてくれていたもの…


その瞬間、嬉しい…はずなのに、安心したはずなのに、何故か私の頬は伝うそれを感じた。あれだけ流したというのに、それなのにまだとどまる事を知らないらしい。それどころか、その勢いは増すばかりで。


「大丈夫。大丈夫だ…」


そんな私に何度もそう繰り返し、トウマさんは頬を伝う涙を拭ってくれた。

その優しい声色、視線、手つき、温もり。実感するそれら全てが、あなたは彼だと私に告げる。そんな私にはもう、あなたは誰ですか?なんて尋ねる意味は無い。


「…っ、ト、ウマさんっ、」

「ん?」

「トウマ、さん…っ」

「うん」

「……あ、いた、かった…」

「……え?」

「…わ、たしっ、トウマさんに、あ、会いたかったんですっ、ずっと、ずっと、トウマさんにっ、会いたかった…っ!」



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