ここに在らず。
扉を開けた先、そこは廊下だった。ちょうど私が寝ていた部屋の前を通り過ぎたらしいその人は、トウマさんではない。
「…何故、ナツキさんがここに居るのでしょう?」
パチパチと目を瞬かせ、私は目の前の彼、ナツキさんに思わず尋ねる。するとナツキさんは、「何故って、仕事だよ仕事」なんて心なしかガッカリしたように言った。
「あーあ、今日中にやって貰わないと困るんだけど…あんたが起きたっつったら、またあの人サボるな」
「?、あの人、ですか?」
「?、トウマさんだよトウマさん。つーかあんた起きてていいの?結構悪かったんだろ?」
「え…あ、はい。だいぶ楽になりました…ので」