ここに在らず。
「…で、でも、それだけでは無いんです。あの、確かに鍵もそうなのですが、私はいつも公園までの道程の記憶が無くてですね、だからそれで、私は夢なのかと…」
「…それは俺も、始め分からなかった。でもそれを個人的に俺に教えてくれた人が居る」
「え、教えてくれた人?…ナツキさん…でしょうか?」
他にこれを知る人が居るだなんて、私にはナツキさんくらいしか思い浮かばない。けれどトウマさんは私の問いに「いや、違う」と首を振る。
「君の、いつもの迎えの人だ。何かバレたらマズイらしくて名前はあえて教えて貰わなかったんだけど…スーツの男性だ。分かるか?」
そう私に尋ねるトウマさん。その言葉で思い浮かぶ人が…私には居る。
「彼が鍵を開けてくれていたんだ」
そう言われた瞬間、いつものあの人の顔が浮かび…全てに現実味が増すのを、私は感じた。