ここに在らず。


「藤堂さんと話した時、俺はまだそんな君の状態を知らなかった。だから藤堂さんの何故君が外に?という質問には答えられなかった訳だけど、その時どうやら藤堂さんは俺を疑ったらしい」

「え、疑った?」

「あぁ。俺が君を連れ出し、藤堂家の中を探っているのではと思ったみたいなんだ。まぁ君は一人で出られ無いはずだし、事情を他言する事も無いはずだ。それなのに君は外に居たというし、何故か家の事情を知って口を出してくる俺まで現れたんだから、そう思っても可笑しくはないんだろう。で、結局。どうにかしようと色々話はしたけど、最終的に君との接触をしない事と、この家での仕来りを口外しない事を約束する代わりに、今回の君への罰、そして今行われている分を取りやめにすることまでしか受け入れて貰えなかった」


そして、「本当は、君が置かれている状況をなんとかしてあげたかった。それが君に約束した、君を助けるという意味だから」と呟くトウマさんは、とても悔しそうでいて、バツの悪そうな、そんな表情をしていた。


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