ここに在らず。


私を助けるという約束。それは確かにあの日に交わされたもの。

あの日、確か私は学校へ行くようにと伝えられた電話で目が覚めて、お仕置きが無い事を不思議に思った記憶がある。そして自分の服装を見てみると、それは眠りについた時のそのままの格好で、玄関にはやっぱり鍵がかかっていて……その時夢だと確信したそれらの、その全ての現実を今、私は知った。

お仕置きが無かったのはトウマさんが約束をしてくれたから。パジャマのままなのは眠りについたままの私が無意識のうちに外へと出ていたから。朝、扉が閉まっていたのは朝のチェックに間に合うように使用人の方が閉めてくれていたから。

そんなまさか、と思うけれど、でも現実なのだと彼は言う。これは現実で、夢では無い。夢では無いのだ。…そう、その後の今までの事も、何もかも全てが。


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