ここに在らず。
話を聞いて、色々と思う事はある。
不思議な事も、分からない気がする事も、驚いた事も、信じられないような事も…色々あり過ぎて頭の中では今すぐには整理がつかなかった。…でも、一つ。たった一つだけど大きな一つ。それだけは気づけた事がある。
「……すみません。私、私は本当に…」
ーーとてつも無く情けなくて、最低な人間だ。
私の視線は、ずっと向けられていた彼の視線に耐えられなくなり、膝の上へと落ちていく。そこにはグッと強く握られた私の両手があった。
「…私はあなたの事をずっと、ずっと疑って…疑う事で辛い事を全部、あなたのせいにしていた…」