ここに在らず。


「私にとって一番大切なのは、トウマさんの居る、望みを叶えてくれるあの世界を守る事じゃない。あなたの居る現実を見つめる事だった」


だから現実と向き合うためにあの夢を受け入れたつもりでいた。でも、それは違う。間違っていた。私はずっと、ずっとあの世界の中にトウマさんを閉じ込めて、あの世界の存在とするために夢を受け入れようとしていたのだ。


『あんたがしてるのは…それこそ、トウマさんから目を逸らす事だ』


頭の中であのナツキさんの言葉が蘇る。

その通りだ。私はずっとトウマさんから目を逸らしてきた。こんなにも真っ直ぐに向けられるものが眩しくて、尊くて、現実となった時に私にはそうする事しか出来なかった。それが今、後悔として私にのしかかる。


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