ここに在らず。


「え?」

「自分達ではどうにも出来そうに無いと、俺にだったら何とか出来るんじゃないかと言われたよ。それで君が良くなるまでは様子を見る事になって、あのままあそこに居るより場所を一度変えた方が良いんじゃないかと、あの時迎えに行ってそのまま連れて帰って来たんだ。だから藤堂さんは君がここに居る事を知ってるし、後はこっちに任すと、でもこれからの事を決めたらそれは報告するようにと言われてる」


そう、トウマさんは相変わらずケロっとした表情で、私の知らないそれまでの出来事をつらつらと話した。

意味は分かる。分かるけれど、でもそれって…


「…私は、本邸の人達に…心配、されていたのでしょうか。それとも…」


…あんなに嫌だったあの場所に、あの人達。それなのに今、私の中には妙な感情が渦巻いている。

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