ここに在らず。


そう答えながらも、私の中で何かが衝撃を受けて動かなくなってしまった、そんな感覚だった。呆然としている自分はきっとそこから来る。でも、頭の中で状況の理解はしっかりとしている自分も居るから不思議だ。


「大丈夫か?」と、私を心配してくれるトウマさん。初めて会った時から何も変わらない彼は、いつもの優しい私の知っているトウマさん。大好きなトウマさん。そんな彼に「はい、大丈夫です」と答えながら、私はそうか、と、認識を改めた。

トウマさんは私の保護者になるんだ、これからお世話になるという事は、そういう事なんだ。

それは、また今日から新たな関係が始まると、私にはそう思えた。でもきっと…そう思ったのは私だけで、トウマさんはずっと、きっとずっとそう思っていた…いや、そう思ってくれていた。


それはありがたい事なはずなのに、そう思った自分が居る事も事実なはずなのに…その時私は、何故かチクリと針で刺されるような痛みを感じた。それが何なのかは…分からない。

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