ここに在らず。


「…じゃあ、少しだけ寝かせて貰おうかと思います」


トウマさんの提案に甘えた私は、そっと目を閉じた。そうだ、きっと疲れたのかもしれない。初めての場所で、初めての経験だった訳だし…きっと、だからモヤモヤしているんだ。そう心の中で呟きながら車の心地良い揺れに身を任せると、意識はだんだんと遠くなり、気づけば私は眠りについていた。



ーーー
ーー



「ーーエ、ーーたよ」


ぼんやりとした意識の中、何かが私の耳を通り過ぎる。


あれ?私は確か、買い物に出掛けて…疲れたから寝かせて貰って…


「着いーーよ、…サエ?」



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