ここに在らず。


「あぁ、君を抱き上げていこうかと…って、軽く揺さぶって起きたならそれでも起きてしまうか」

「……」


…何か今、すごい事を言われたような気がする。


いや、そんな訳が無い。なんてやっと動き始めた頭で思っていると、運転席を出てぐるりと回った外から助手席側のドアを開けてくれたトウマさん。そんな彼が発した言葉で、その内容は確定した。


「でももしサエの身体が辛いならそうするけど、どうする?」


そう言ったトウマさんは「来るか?」なんて言いながら、開かれたドアのそこから少し乗り出して両手を軽く開いてみせる。…そのジェスチャーはつまり、それはもう完全に、だからそれって、その…


「い、いえっ、結構です!大丈夫です!もう元気一杯ですっ‼︎」


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