ここに在らず。
私は椅子へ寄りかかっていた背筋をしゃんとさせて、出来る限りの気持ちを乗せて断らせてもらった。そんなまさか、まさか抱っこするよなんて、そんな事にお願いしますなんて言える訳が無い‼︎
すると、「そうか?」なんて首を傾げながらも顔色の一つも変えず、当たり前のように、なんというか通常モードで言うトウマさんに「はい!元気なので!」と、私は念を押すように答える。それを確認したトウマさんは、まるで何事も無かったかのように流れるような動作で買った荷物を手に持つと、「それなら、じゃあ行こうか」といつも通りに微笑みを返してくれた。
…トウマさんは、恥ずかしく無いのだろうか。
なんて、私はふと思う。まるで変わらないトウマさん。何とも思っていない様子の彼を見て私は不思議に感じた。
抱き上げていこうかと…って、まるで女性を男性が抱き上げて運ぶのは当たり前の事、とでも言うような、そこに何の違和感も感じていないような言いようだった。いや、そんな訳は無いだろうと、そんなの私にだって分かる。