ここに在らず。
私の思考は…停止していて、言葉の意味だけが次々と頭の中に飛び込んできていた。
そしてその単語一つ一つを繋ぎ合わせてみると不思議な事に、そこには私の知っている私が存在している事に、気がついた。彼の言うそれは…確かに正しく、私自身の姿だ。
私は…私は、ずっとルールの中で生きてきた。
それは本邸の人達とのルール。そこへ住まわせて貰うためのルール。母との未来のためのルール。だからそれは私のための、私には絶対守らなければならないルールだった。でも…それ以外にも、私は私にルールを作ってきていたらしい。
「…私は、甘えてはいられないと、甘える事はいけない事だと思ってきました。だって私には甘える場所が無いですし、甘えられる環境でもありませんでしたから」
そう思う内に、やりたくない、出来ないと思う事は甘えだと。決められた環境で適応出来ない自分は甘えていると。自分自身に言い聞かせて、甘えたいと思う気持ちはいけないものだと常にそう思い続けてきて…でもそれは、ナツキさんの言う通り。それは、私の甘えの定義の範囲をどんどん広めていった。…私の、望みの数だけ。