ここに在らず。
私の言葉にナツキさんは何やら衝撃を受けたようで、目を剥いてピタリと身体を硬直させる。そして動揺を隠しきれないままに口をパクパクさせていて…私には、今のナツキさんの心境がなんとなく分かった。
…ナツキさんは、人を知る事が上手なのかもしれない。だから彼の言う事も、やっぱり私にはすんなりと入ってくるのかもしれない。
「“私は私を自分で作ったルールで追い込んでいる”…正直、目からウロコでした。なんだか私、変われそうです」
そして「ありがとうございます」と心からのお礼を言うと、ナツキさんは少し照れたように、「はいはい」なんてそっぽを向いてしまった。
…私も、ナツキさんのように人の気持ちが分かる人になりたい。
それもまた、トウマさんと同じような対等になるためには必要不可欠な事だ。