ここに在らず。
そう。いつもは正面から見ていたそれ。どうやらいつもとは真逆の場所から来ていたらしく、ギリギリそれが見えてくるまで今の自分の位置がさっぱり分かっていなかった。ーーだから今、私は分かった。私は理解した。もうあの場所に着いてしまうという事、私はあの場所を目指していたのだという事を。
トウマさんの事を思ったり、知らない場所に少しワクワクしていたり、ナツキさんが隣に居たり…それはいつも通りを忘れさせるものだった。いや、“いつも通り”そのものを、ここ数日の私は忘れていたのかもしれない。そうだった、だから怖かった。だから嫌だった。だからナツキさんが、ここに居る。
「……」
私は、足を止めた。ゾクゾクと、嫌な感じがする。
…そうだ。ここに来たく無くて、それは何故かと考えて、それで私は私の甘えに気づいて、そんな甘えをトウマさんとナツキさんは受け入れてくれて、それで私も甘えてみようって、だからナツキさんがここに居て、だから私は、でも私は……でもあそこには、私しか居なくて。