ここに在らず。


「なんで?」

「だって、行くって決めたのは私で、だからナツキさんに手伝って貰って、トウマさんも私が学校に行ったと思ってて…それなのに、行けなかったなんて、そんなの言えない。みんなこんなに私を助けてくれて、心配してくれて、それなのに私は、そんな気持ちに応える事も出来なくて、そんな私はきっと二人に愛想を尽かされてしまう…でも、それが私なんだ。だから私は独りなんだ。だからいつまでも私は何も変わらなくて、だから私には何の価値も無い。それなのに浮かれていい気になって、だけど私はどこまでもどうしようもない私のままで、私は私、それは何も変わらないー、」

「まだそんな事、思ってたのか?」


それは、急に聞こえて来たナツキさんの声。気がつくと私は自分の世界に入り込んでいたようで、その声でハッと我に返ったような感覚になった。

私は顔を上げて見る。自分の斜め前、隣に居たナツキさんは前に出て少し私に被るような立ち位置だった。私はどこからどこまで話したんだろう、どんな話し方をしたのだろうと、彼の顔を確認した瞬間に思う。



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