ここに在らず。


「…あんたに価値が無い?そんな訳あるか!」


…ナツキさんは、声を荒げた。怒っていた。彼は私に怒っていた。


「だったらそんなあんたを心配する俺は何だ!トウマさんは何だ!前からそうだ!あんたは、あんたはそうやって…っ」


私に覆い被さるような距離でナツキさんは言う。私に想いをぶつけてくる。怒られている事に変わりは無いのだけれど…私にとって、それは初めての経験だった。


「何で自分を許さない⁈ 」


…こうやってナツキさんに教えて貰うのは、これで何回目だろうか。



ーー呆然と立ち尽くす私。そんな私の手をナツキさんは力強く掴むと、「帰るぞ!」と、ズカズカと乱暴な勢いで歩き出した。

< 402 / 576 >

この作品をシェア

pagetop