ここに在らず。
「…あんたに価値が無い?そんな訳あるか!」
…ナツキさんは、声を荒げた。怒っていた。彼は私に怒っていた。
「だったらそんなあんたを心配する俺は何だ!トウマさんは何だ!前からそうだ!あんたは、あんたはそうやって…っ」
私に覆い被さるような距離でナツキさんは言う。私に想いをぶつけてくる。怒られている事に変わりは無いのだけれど…私にとって、それは初めての経験だった。
「何で自分を許さない⁈ 」
…こうやってナツキさんに教えて貰うのは、これで何回目だろうか。
ーー呆然と立ち尽くす私。そんな私の手をナツキさんは力強く掴むと、「帰るぞ!」と、ズカズカと乱暴な勢いで歩き出した。