ここに在らず。


行きよりも早く感じた帰りの道。気がつくと私はトウマさんの部屋のあるマンションの前に居て、そのまま向かった部屋の中へと引き込まれるような勢いで入った。

手を引かれるままに私はリビングへと向かう。トウマさんは仕事へ出てしまっていて、どうやら居ないらしい。ソファの前まで私を誘導したナツキさんは、そこでやっと掴んでいた私の手を離した。…でもそれだけで、まだ何も言わない。目も合っていない。

…それでも、私にはナツキさんに声を掛ける事は出来なかった。


ーー私は、失敗ばかりしている。


何がどうなれば正解かとか、そんな事は分からない。…でも、それだけは言えた。


私は、答えに失敗してしまった。


どうやっても人と上手く関わる術が分からない。ナツキさんは怒ってしまった。きっともう私に愛想を尽かしている。私の事をダメな奴だと、何度言っても分からない奴だと思っている。何度もナツキさんは私に教えてくれて、今日手を貸してくれたのに、私は結局それを裏切る事になってしまった。最低だと思った。そんな私は最低だ。でもーーだからこそ、それは私には仕方の無いこと。

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