ここに在らず。
結局どれだけナツキさんが教えてくれても、私には分からなかった。分かるはずが無かったのだ、ナツキさんの言いたい意味が。ナツキさんの言う私が。何故ならそれは、私とナツキさんの間で認識が違ったから。私の価値に対する認識がきっと違ったのだと、ここに来るまでの間に考えて、結論に辿り着いた。
「…そうだよな、仕方ないよな、だとしたら」
ナツキさんがこちらも見ずに言う。お互いソファの傍まで来たはいいが、座ることもせず佇んだままだった。
「あんたに中々伝わらなくても仕方ない。あんたがそれを受け取れなくても仕方ない。あんたはいつも信じようとはしない。あんたの意思は、本当のあんたのものじゃない」
そして、ナツキさんはようやく私へと顔を向けた。その瞳の奥の方では、ゆらゆらと感情が揺らめいている。
「…あんたは可哀想だ」
その言葉はきっと、揺らめく感情から、心の奥から滲み出た気持ち。
「あんたはきっと、幸せになれない」
そう彼は、何の迷いも無く私に告げた。