ここに在らず。


「……」


……何て、答えれば良いのだろう。


告げられた言葉に、始めに抱いた気持ちはそれだった。ナツキさんに何て答える事が正解なのか、そんな事を考えた。


『あんたはきっと、幸せになれない』


その言葉に反感は抱かない。そんな事は無いとは言えない。その通りなのかもしれないとすら思う。でも…


「……」


それをそのまま口にするべきなのか。もしかしたらまた、ナツキさんを怒らせてしまうかもしれない。ナツキさんに不快な思いをさせてしまうかもしれない。そしてナツキさんに…もう手遅れかもしれないけれど、嫌われてしまうかもしれない。

嫌われるのは嫌だった。私は嫌われて当たり前だと、むしろ意識すらされていない存在だと分かっている。昔から私には知り合いと呼べる人すら居なかった。ずっと独りだった。でも、そんな私でも…今は違う。今の私にはトウマさんとナツキさんが居る。二人と居る事が嬉しくて、そんな私は幸せだと思っていた。私はここに居る自分が幸せで、きっとこれからも頑張っていけると思っていたけれど…どうやらそれも、私の思い違いらしい。

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