ここに在らず。
「あんたはあんたを否定して、どこへ行きたいの?自分の想いも願いも全部捨てた先に何が在る?…あんたの生い立ちを考えたら、そうなっても仕方ないのは分かる。何も希望が見えなくて、信用するものすら何一つ無かったのも分かる。でも……今は違うだろ?」
「……」
「変わっただろ?変われると思ったんだろ?そう昨日言ってたあんたは何?それもあんただろ?…もう良いんだよ、あんたはもう変われるんだ。もうあそこには居ない。学校が怖くたって、それで行けなくたって誰もあんたの事を怒らないし、あんたの事を理解しようともせずに否定する奴も居ない。あんたがあんたらしくしてくれる事を…あんたが幸せになってくれる事を、俺もトウマさんも願ってる」
ーー価値が無い奴の幸せ願う程、俺もトウマさんも暇じゃないんだよ。
最後にそう呟いたナツキさんの声は、私の頭を自然と上げさせた。
目が合う。するとそこにはーーやれやれといった感じの、ナツキさんの顔があった。そして、「ここまで言えば、あんたの意味くらい分かんだろ?」と、私の中を覗いたかのようにナツキさんは告げた。