ここに在らず。


どうせ良い事を言われていないそれ。そんな事、聞こえなくたって私には分かる。私に関わってはいけない、それは口にせずとも共通の認識の上で成り立つルールとしてここに在った。それなのにこそこそと私の事を話す…それは、私の事を認識しつつ否定する事。価値の無いものにわざわざされる事だと思った。

だったらそれこそ、始めから無視してくれる方がいいと、無関心に一瞥もくれない人の方がマシだと思った。…でも、今私は…暗く重い気持ちの中でほんの少し、浮き上がるような軽い気持ちを感じている。それはきっとーー


ーー嬉しいという、気持ち。


それは私がここに居る、その証明だと思った。私は存在しないものでは無い。私は今、ここに存在している。人の目に映っている。だから私の事を話して、目をやった。例え良いもので無くても認識されている事の貴重さを今の私は感じた。

今あの人の中に少しでも私が存在したのなら、あの人の瞳に私が映っていたのなら…もしかしたらいつか、変わった私をその人が知る日が来るかもしれない。

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