ここに在らず。
……本当に…
本当に?
足が一歩、また一歩と前へ進み始める。
まさか、本当に…あの人なの?
いつの間にか私は駆け出していた。
ここからでは見えない彼の顔。あの日と全く同じで彼はフードを被ったまま。
早く確認したい…早く、早く彼だと確信したい!
私が走って目指す先、ベンチに座っていた彼は影のようにぬっと動き出した。それを彼が立ち上がったのだと分かったちょうどその時、私は彼の元へと辿り着く。
「ハァッ、ハァッ…」
走った直後で私の息は上がる。でもそれが落ち着くのも待っていられず、私は彼の両腕をギュッと掴んだ。
「…ト…トウマ、さん…?」
下から覗き込むように見上げた彼の顔。近い距離。すぐ傍にある、彼の瞳。それは灰色の二つの瞳。