ここに在らず。
「あぁ。久し振り」
そう答えた彼の優しげな表情に私は懐かしさを感じた。これだと。私が求めていたのはこれだと思った。その瞬間ーー、
「…っ、」
私は、一気に力が抜けてガクンと地面に膝をついた。
彼の両腕は掴んだまま。私の両手は絶対に離れないと分かっていた。
「…グスッ、…ふぅ…っ、」
だって、今離したら彼が居なくなってしまうんじゃないかと思ったから。
絶対にこの手を離したくなかったから。
いきなり目の前で泣き出した私に彼はどう思っただろう。
私に腕を掴まれているせいで前屈みになってしまっているのにも関わらず、彼は何も言わずにずっとそのままで居てくれた。それだけでも私はすごく嬉しかった。贅沢だと思った…けれど。
「…何があった?」
声が、上から降ってくる。