ここに在らず。
「な、なんで…?」
身体が震えた。なんで?どうして?私にはそんな言葉しか生まれて来ない。だってここは、
「私の……家?」
そう。本邸も、離れもあるその敷地の前。ここは私が嫌で離れた場所。逃げ出した場所。鍵をかけられた私はーーあれ?そういえば何故私はここに居るの?鍵は?いつ出られた?というか何故?
何故トウマさんはここを知っているの?
分からない事だらけの私には無意識に震える自分の身体を止める事が出来ない。一体目の前の彼は何?誰?今更な疑問を抱いた瞬間、急に彼の纏うような闇が怖くなり、とっさに手を離そうとした。
…が、しかし、その手が離れる事は無かった。
「…信じて待ってて欲しい。俺は君を裏切ったりしない」