ここに在らず。
「お誕生日おめでとうございますトウマさん!何を用意しようか悩んだのですが、今回はケーキを作ってみました」
「作った?手作りなのか?」
「はい!…と言っても、ナツキさんにも手伝って頂いたのですが」
なんて言いながら、ヘラッと笑って私は誤魔化した。そうだった、私一人で作った訳では無くて、ナツキさんの力も随分と借りていたのだった。
するとトウマさんは「そうか」と呟いてそっと私の方へと手を伸ばし、ポンっとその手は私の頭の上に乗せられた。
「手作りのケーキは初めてだ。嬉しいよ、ありがとう」
そう言って優しく微笑んだトウマさんは、よしよしと私を撫でる。頑張って良かったぁ…と、私はその手の温もりに目を閉じた。
「…俺からも、渡したい物があるんだ」
「…え?」
その言葉にパチリと、私は目を開く。するとトウマさんは先程まで持っていた鞄の中から一つの小さな箱を取り出して、私に手渡した。