ここに在らず。
その晩の私は、一人で眠る事が出来た。
それはすごく幸せで、すごく温かな気持ちだった。
あんなに見えなかった幸せが今、私には見える。どんなに探しても姿が見えなかったそれが私には見える。それは今…この胸の中にある。
…何故だろう、私は昔に戻れた訳ではない。
トウマさんの傍に居たからこんな気持ちになる事が出来た。トウマさんの傍に居るという事はこういう事だ。トウマさんが幸せを私にくれるから、だから私はトウマさんの傍に居たいと感じるのだ。だから昔のままでないとこうやって幸せを貰う事も無くなってしまうから、だから私は昔に戻って、このまま傍に居たいとーー…
…でも、今の私は昔の私ではない。
昔の私にはこうやって人を好きだと感じる事が無い。そんな余裕が無かったからだ。人に感情を抱く私。それはもう変化し始めている私で、トウマさんの求めているそれでは無いはずだ。