ここに在らず。


「で、今ついに三色展開になった訳だ。ずっと新たな色ってのに拘ってこんな事になったんだけど…つーか今も拘ってんだけど、なんか本人が言うには色の問題じゃなかったんだと」

「?」

「色は人が持ってるもので、人が着てようやく新たな色がそこに生まれんだとさ」

「…新たな色か…」


なんだか先程から引っかかるその単語。私の中でそれは一度聞いた事のあるものだと気付いた時には、私がそこへと辿り着く準備が整っていた。


「だからこの服には華やかさは無い。華やかに人を飾るものじゃなくて、この服が人に飾られるものだからなんだと。で、その細かに違うものの中から自分に合うものを自分で選んで、自分色に染める。そのためのデザインに、そのための色なんだとようやく気付いたって、当時嬉しそうに言ってたよ」


そう語るナツキさんの声はとても穏やかで、そこにはなんだか温かな愛情を感じた。家族愛のような…なんだか、優しく見守るような、そんな想いをそのデザインをしている人に対して抱いているんだと思う。


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