ここに在らず。
「私が、トウマさんの答え…ですか?」
何を思考するでもなく、思わずナツキさんの言葉を復唱する私。そんな私の呟きに対してナツキさんは縦に首を振った。その表情はどこまでも穏やかである。
「それは約二年前。あんたとトウマさんが出会った頃がそれぐらいなんだって、トウマさんの様子から分かった。あの頃、あの人は確かに見えなかったものが見えたんだと言った。それからのあの人が求めてきたものが形になっていく様をずっと見てきたから、だから分かるんだ。その見えたもの…つまり、トウマさんの求めていた答えが、あんたなんだって。あんたがトウマさんをここまで導いたんだって」
「……」
…一体何の話だろう。そう思い浮かんだ自分に、私は心の中で首を振った。
違う、何の話だろうでは無い。これはトウマさんの話で、私の話だ。そして私はまだ繋がってはいないものの、一つ一つの欠片はすでに持っているはずなのだ。
見えなかったものが見えたと、ナツキさんはその言葉を口にした。これに私は心当たりがある。これは確かに、私は彼本人から告げられた言葉だった。
『…君には、色が見えたんだ』