ここに在らず。


「……世界に籠りたいんだ」


そして言葉を待つ私の前で、彼がゆっくり口を開いた。


「自分の世界に籠りたくてこうしてる。感じる圧迫感に籠る音、狭まる視界。それが外と自分の境界線を作ってくれるような気がする」


…その答えは、いつものそれらとは違う。

彼の本質に触れている…絶対に。


「…外の世界が、お嫌いなんですか?」


彼の示すものがよく分からないままではあるけれど、私は感じた事を口にした。

そしてそこで、私は初めての彼の表情を知る。


「あぁ…嫌いだ」


ーー微笑んでいた。


しかし、彼はきっと悲しんでいる…


私には、そう見えた。

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