ここに在らず。


「…ごめんね」

「え?」


ベンチの上ではあの外灯が光を放つ。ぼんやりとした光でも、夜の暗闇の中で私とトウマさんを照らし出してくれる。


「ごめん…」


そう呟くと、トウマさんはそっと私の頭を撫でた。それは優しく温かな彼の掌。


「ありがとう」


そして彼は微笑んだ。

それはもう、いつもの彼の笑顔だった。

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