ここに在らず。
「何の本読んでんの?」
「え?えっと、小説です」
「いや、それくらい分かるって。どんな話?」
「ど、どんな?どんなですか?…えっと、まだ全部読んでいないので分かりませんが…恋愛系です」
「恋愛?へーえ」
…って、私!なんで普通に会話してんの!
あまりにも自然だったその流れについのってしまった自分に突っ込みをいれつつ、会話をするというフレーズで一つ、私は大事な事を思い出した。
…そうだ、向こうから声をかけて来たとしても、あまり人と話さない方がいい。またどこでどう言われてお仕置きに繋がるか分からないから。
鍵は今だに閉められたまま。どうせ学校にしか行かせてもらえない私には生活上では大した問題では無いのだけれど、このままずっとでは困るのだ。それではいつかの未来の希望が失われる。
それに、
「…あの、図書館では私語は慎まなければいけません」