ここに在らず。
そう。何と言ってもここは図書館。ポツリと呟いた声すら通る場所。だったらそれを理由に話を終わらせてもらおうと私は閃いたのだ。
「だから、何か読まれたらいかがでしょう?他の方の迷惑にもなりますし…」
「あぁ、そっか。そうだな」
「へ?」
「ん?何?」
「あ…いや、何でも無いです」
「?、そうか?」
なんて言うとその人はさっと立ち上がり、スタスタと本棚の方へと向かっていった。私はあまりにもあっさりとしたそれに呆気にとられ、パチパチと意味もなく瞬きをしてしまう。本当に…なんだろう、さっぱり分からない。
そして、何事も無く一冊の本を手に戻って来たその人は当たり前のように私の隣の席に着き、その後じっと大人しく本を読んでいた。そしてそのまま口を開く事も無く、その奇妙な時間は昼休みが終わるまで続いたのだった。
…何なんだろう。
何なんだろうこの人は。