ここに在らず。


「これか?前に図書館では本読めって言われたからさ。ま、誰にとは言わないけど」

「……」


なんか、今すごく意地の悪い言われ方をしたような…

なんて思いながら私がその人を見ていると、「おいおい冗談だろ、そんな怒んなっての」と、その人は少し焦ったように笑って誤魔化した。

それに「怒っていません」と答えると「そりゃどーも」と言われる。どうも?どうもなの?

なんでどうもなんだかさっぱり分からない、というか行動全てよく分からない。なんだか不思議…というか、変な人だな…


うんうんとそんな思いに心の中で頷きながら、私は自分の手元の本へと視線を戻した。すると隣から「また恋愛系?」と、声が聞こえてくる。


「…そうです」

「へー、こないだと同じヤツ?」

「いえ、あれは読み終わったので別のものです」

「そうなの?早くないか?」

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