ここに在らず。


「そんな事無いですよ、もう数日経っていますし」

「あ、前に俺に会った日ちゃんと覚えてんだ?」

「……」

「えー、またそれかよ」

「…いえ、なんでそんな事を聞くのだろうと不思議に思いまして」

「え?」

「そうおっしゃるという事はあなたも覚えてらっしゃるんですよね?私が覚えていても可笑しくは無いんじゃないかなと思うのですが…」

「……」

「え、何か違います?」

「……いえ、その通りでございます」


そう言うとその人は視線を宙に浮かべて「なるほどねぇ」なんて呟きながら何やら納得した様子で、その後、私の方へと視線を戻した。

< 98 / 576 >

この作品をシェア

pagetop