The shop of the witch.
dark box
もうすぐ時計の針が二十三時をを指す。
蛍光灯の明るさがちょっと目に痛いと思いながら、彼女は自室の机に向かい手紙を書いていた。
ふと気づけば音が聞こえる。
目の前のカーテンの裾を摘み少しだけ引くと、窓の向こうではバタバタと激しい音を立て雨が降っていた。
(雨…)
街頭の周りには雨のせいもあり光の笠が丸く出来ている。何気なくそれを眺めていたら『はぁ…』と軽い溜め息が零れる。
開けていたカーテンを締め、手にしていたシャープペンを机に転がした。
「…これでいいや」
手紙の本文を書き終え、机の引きだしの中から便箋袋を取り出した。ガサガサ音を立て、その中から綺麗な薄青色の封筒を一枚取り出す。便箋袋をしまいいれると引き出しに入れて再びペンを手にした。
郵便番号、住所、宛名、それぞれを手際よく書いて切手を貼る。しかし、彼女は差出名や差出住所は書かなかった。書いてしまえば『書いた意味がなくなる』からだった。
今一度内容の確認をして、それを終えると便箋を封筒に入れる。机の隅にある小さなプラスチックのボックスからのりを取り出して、封の回りに軽く塗り封を閉じた。
それを机に置いたまま蛍光灯のスイッチを押せばカチリと音が鳴り部屋全体が暗くなる。
椅子から立ち上ち隣りのベッドに上がるとスプリングの軋む音がやけに響いた。
まだ少し肌寒い空気に身を震わせ、足下にあった毛布を引っ張り肩までかける。
『近寄んな』
『キモいんだよブス』
『あははははははは』
『―――死ねよ』
目を瞑った途端、過去の残像が頭を過った。
途端にに胸の奥が苦しくなって、とてつもなく不安になって、 たまらず怖くなり目を開ける。
(……)
じんわりと目の前が滲む。
このままではまた眠れなくなってしまうと更に不安になった。
何とか気持ちを落ち着かせようと、彼女は枕元に置いていたipodを手に取る。イヤフォンを耳に入れ本体のボタンを押すとすぐにゆったりした曲が流れ始めた。
そうして再び目を閉じる。
頭を空っぽにして、深呼吸をしては次第に落ち着きを取り戻し、繰り返す内に彼女はやっと夢の世界におちた。