スイート・リトル・ラバーズ
1、引き合わせ
 友達との旅行中、お寺の写真を撮りたいという友達の要望に付き合い、東北の全国的に有名なお寺まで行った時のことだった。

 友達がデジカメで写真を撮り始めたから、私は広いお寺の中を見回ってみようとグルグル回り、大きな池のある所まで来たところで、

「あなた守られていますね」

 と後ろから声を掛けられた。

 驚いて振り返ってみると、そこには年を取ったお坊さんがいて、私の方を見てニコニコ笑っているところだった。

「な、何ですか?」

 という私の質問は聞かず、

「あなた幽霊信じますか?」

 と言われたから、私は首を傾げてみせた。

「分かりませんか?」

 聞かれたから答える。

「はい」

「あなた、本が好きなんでしょう?」

「どうして知ってるんですか?」

「女の人にしては珍しく歴史の本」

「何で知ってるんですか?」

「あのね」

「はい」

「あなたの後ろの人が教えてくれているの」

 そこで振り返ってみたけど、そこには当然誰もいなかった。不思議そうな顔をする私を見て、おじいさんは言葉を続けた。

「だから聞いたんですけどね、さっき、幽霊を信じますかって」

「幽霊?」

「そう、幽霊。死んだ人のこと。別に信じなくてもいいけどね、あなたが高校時代に付き合っていた男の人がね、あなたを守っているんですよ。心って書いてシンって名前の人ですよね」

「はい」

 そこで私が口を塞ぐと、そのおじいさんは最後に、

「この出会いも何かの縁でしょうから、今日はちょっとお話しましょうか」

 とそう言った。
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