スイート・リトル・ラバーズ
 でもそんな私の警戒心が一気にほぐれた時があった。

 隣の組の前田君という男子の葬式でのことで、その前田君の葬式に来ていた男子生徒が笑っているのを見たシンが、

「お前、ふざけんなよ」

 と言って、その中の一人の生徒の胸倉を掴み、そのまま持ち上げたということがあった。

 殴り合いになる前に先生達が止めに入ったから事なきを得たようなものの、場は一気に険悪となった。

「帰る」

 怒ったシンはそう言って、そのまま帰ってしまったけれど、私はこれを見た時、シンはもしかしたら良い人なのかもしれないと思った。

 前田君の死因は自殺だった。

 イジメを苦にしての自殺で、そのイジメの首謀者が通夜の席に来てまで笑い声を上げていた男子生徒達だった。

 怒らない方がおかしかった。

 お葬式に来ること自体がそもそも非常識であり不謹慎だった。

 それなのに、先生達は誰も止めなかった。

 だからシンは代わりに怒ったのだった。

 自分の代わりに感情を表現してもらって、心がスッキリするということはある。

 私もイジメを受けていただけに、シンの行動を見た瞬間、怒りが静まるような気がした。
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