スイート・リトル・ラバーズ
 シンは私と2人だけの時は自分のことを「僕」と言った。

 人前に出る時は「俺」と言うのだけれど、家族や一部の親しい人間と話す時には「僕」という言葉を使うらしかった。

 これを聞いた時、シンの素朴な一面を見れて私は何だか嬉しかった。

 それと同時に、実はシンは「純」な人間なのかもしれないと思った。

 その証拠に、付き合っている間、シンは私に肉体関係を求めたりはしなかった。

 それは2年生、3年生になっても変わらなかった。

 以前一度だけラブホテルの前を通りかかったことがあったのだけれど、

「こういう所、興味ある?」

 と私が聞くと、シンは怒ったような顔をして、

「こういう所には行っちゃだめだ」

 と吐き捨てるようにそう言ったことがあった。

 他にもシンには乱暴なところがあるけれど、基本的には弱い人間を守ろうとする性格をしていた。

 テレビで虐待のことを聞いたりすると、頼まれてもいないのにものすごい怒って、子どものことを虐待する親の悪口を一緒にいる間ずっと言ったりした。

 読む本なども良い言葉が書いてある本が好きで、そういう本を見つける度に、シンは私にそれをすぐに貸してくれたりした。

 どれもこれも意外な一面だった。

 本人の前では言わなかったけれど、シンは優しい性格をしていた。

 そんなシンとオクテな私との関係だったから、ケンカなども当然起こらなかった。

 起こるどころか、シンは私に会う度に、何かしら元気になるような言葉をかけてくれたり、笑わせてくれたりしたから、私は少しずつ心の健康を取り戻していった。

 きっと苦しんだ分が返って来たんだ。

 シンと一緒にファミレスに入ってご飯を食べたりする時など、私は一人心の中がそう思う時があった。
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