*ふわり、はつこい*
「ねえ、速水くんとはどうするの?」
心向が小声で耳打ちした。
吹っ切れたつもりではいたが、名前を聞くとそれなりにドキっとするもんだ。
「あ、うん。今日ちゃんと話そうと思ってるよ」
「そっか」
至とはあのバレンタイン以来、ちゃんと話す機会も無かったし、結局疎遠になっていた。
未練とかはないけど、今日はちゃんとこの気持ちに整理をつけようと思っている。
「そんな心向は先輩のこと、どうなの?」
心向は一瞬、苦い笑みを浮かべてからこう答えた。
「まだ、好きだよ」
あたしは『そっか』と相槌を打った。